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前橋地方裁判所桐生支部 平成10年(ワ)2号 判決 2000年7月26日

原告(反訴被告)

辻井英幸

被告(反訴原告)

山田眞一

ほか二名

主文

一  原告の被告らに対する別紙債務目録記載の債務は、被告山田眞一に対し一九四八万三四三二円を超えては存在しないこと、被告山田穗子に対し一九四八万三四三二円を超えては存在しないこと、被告山田圭三郎に対しては存在しないことを確認する。

二  原告(反訴被告)は、被告(反訴原告)山田眞一及び被告(反訴原告)山田穗子に対し、各二〇二七万一一八三円及び各内金一九四八万三四三二円に対する平成七年四月二三日から支払い済みまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

三  原告の被告山田眞一及び被告山田穗子に対するその余の請求をいずれも棄却する。

四  被告(反訴原告)山田眞一及び被告(反訴原告)山田穗子のその余の反訴請求、被告(反訴原告)山田圭三郎の反訴請求を、いずれも棄却する。

五  訴訟費用は、原告(反訴被告)と被告(反訴原告)山田眞一及び被告(反訴原告)山田穗子との間においては、本訴反訴を通じて、これを六分し、その一を原告の負担とし、その余を同被告らの負担とし、原告(反訴被告)と被告(反訴原告)山田圭三郎との間においては、本訴反訴を通じて、同被告の負担とする。

六  この判決は、第二項につき仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

(本訴事件)

一  原告

1 原告の被告らに対する別紙債務目録記載の債務は、被告山田眞一に対し九五三万四六九五円を超えては存在しないこと、被告山田穗子に対し九五三万四六九五円を超えては存在しないこと、被告山田圭三郎に対しては存在しないことを確認する。

2 訴訟費用は被告らの負担とする。

二  被告ら

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

(反訴事件)

一  被告ら(反訴原告ら)

1 原告(反訴被告)は、被告(反訴原告)山田眞一及び被告(反訴原告)山田穗子に対し、各六九七九万〇二三八円及び各内金六九〇〇万二四八七円に対する平成七年四月二三日から支払い済みまで年五分の割合による金員を、被告(反訴原告)山田圭三郎に対し一一〇〇万円及びこれに対する平成七年四月二三日から支払い済みまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

2 訴訟費用は原告(反訴被告)の負担とする。

及び右1につき仮執行宣言の申立て

二  原告(反訴被告)

1 被告(反訴原告)山田眞一及び被告(反訴原告)山田穗子の各請求中、各九五三万四六九五円を超える部分について、いずれも請求を棄却する。

2 被告(反訴原告)山田圭三郎の請求を棄却する。

3 訴訟費用は被告ら(反訴原告ら)の負担とする。

第二事案の概要

一  本件は、平成七年四月二二日午後二時ころ、栃木県足利市小俣町一八九二番地付近道路上において、山田大助(昭和五一年九月一七日生)(以下「大助」という。)運転の自動二輪車(群馬を一四八四)と原告運転の普通乗用自動車(水戸三三と一〇三一)との間に起きた交通事故により生じた大助の死亡及び右自動二輪車等の損壊について、原告が本訴請求の趣旨のとおり、大助の父母及び弟である被告らに対し各債務の不存在の確認を求めるとともに、被告らが、原告に対し反訴請求の趣旨のとおり各損害賠償の請求をした事案である。

二  争いのない事実及び原告の認容する損害額

1  大助(昭和五一年九月一七日生)は、平成七年四月二二日午後二時ころ、栃木県足利市小俣町一八九二番地付近道路上を、群馬県桐生市方面から栃木県足利市葉鹿町方面に向けて自動二輪車(群馬を一四八四)(以下「本件バイク」という。)を運転して進行していたところ、進路前方(以下、大助の進行してきた道路を「大助進行道路」という。)の信号機により交通整理の行われていないT字路交差点(以下「本件交差点」という。)の北側道路(以下「原告後退道路」という。)から、原告運転の普通乗用自動車(水戸三三と一〇三一、以下「原告車両」という。)が後退して同交差点内に進入し、大助の進路を妨害したため、同人が急制動をかけ、これにより本件バイクが転倒し滑走して、原告車両の左側面に本件バイク及び大助の身体が衝突し、その際の衝撃により、同人は、同日、足利市内の病院において死亡するとともに、本件バイク及び大助の着用していたヘルメット等の装具等が損傷あるいは使用不能となり(以下「本件事故」という。)、原告において、右死亡及び損傷等につき、不法行為責任を負うに至った。

2  被告山田眞一(以下「被告眞一」という。)及び被告山田穗子(以下「被告穗子」という。)は、大助の両親であり、被告山田圭三郎(以下「被告圭三郎」という。)は、大助の弟であり、大助の第一順位の相続人は、右両親である被告眞一及び被告穗子であり、法定相続分各二分の一を有している。

3  損害額

(一) 大助死亡による損害(以下「人的損害」という。)

(1) 治療費 二万七一七〇円

(2) 入院雑費 一〇〇〇円

(3) 文書料 五一五〇円

(4) 葬儀費用 一二〇万円

(5) 逸失利益 三九〇四万九三三八円(ただし、多くとも債務不存在確認請求の主張に係る四一〇九万八二七八円を超えるものではない。)

(6) 慰謝料 二〇〇〇万円

(二) 本件バイク等の損傷による損害(以下「物的損害」という。本件バイク等の損傷等による損害が大助に帰属することは、当事者間に争いがない。)

(1) 車両損害 一三万円(ただし、多くとも債務不存在確認請求の主張に係る二五万円を超えるものではない。)

(2) レッカー代金 三万円

(3) 皮ジャンパー 購入代金の半額である三万二〇〇〇円(ただし、多くとも債務不存在確認請求の主張に係る五万四一六〇円を超えるものではない。)

(4) ヘルメット 購入代金の半額である一万七五〇〇円(ただし、多くとも債務不存在確認請求の主張に係る二万二〇九〇円を超えるものではない。)

(5) ブーツ 六〇三〇円

(6) グローブ 二一六〇円

4  人的損害につき、平成八年五月一〇日、自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)から三〇〇二万九一七〇円の支払いがなされた。

三  争点

1  大助に生じた損害

(一) 人的損害について

(1) 逸失利益

(被告眞一及び被告穗子の主張)

九五二四万六六一九円

大助は、群馬県立桐生工業高等学校を卒業し、平成七年四月群馬県立太田産業技術専門学校に入学し、そこに通学しながら、その両親である同被告らが自宅で経営するバイクショップの手伝いをしていた者であり、本件事故に遭わなければ、右手伝いをしながら、満二〇歳で右専門学校を終了して就職し、満六七歳になるまで四九年間稼働することができた。

右によれば、大助の基礎年収は賃金センサス、産業計・企業規模計・学歴計・全年齢の男子平均年収額五五七万二八〇〇円とするのが相当であり、これに生活費控除三〇パーセント、右四九年間の中間利息を年五分とする新ホフマン係数二四・四一六二で計算すると、九五二四万六六一九円となる。

右中間利息の控除につき、右ホフマン係数の適用が相当でなくライプニッツ係数が採用される場合は、近時における低金利の情勢等を踏まえて、利率を年四パーセント以下とするライプニッツ係数が適用されるべきである。

(原告の主張)

三九〇四万九三三八円(ただし、多くとも債務不存在確認請求の主張に係る四一〇九万八二七八円を超えるものではない。)

大助の基礎年収は賃金センサス平成八年、第四巻、都道府県別、群馬県産業計、企業規模一〇名ないし九九名の男子労働者全年齢平均年収四三四万三四〇〇円とするのが相当であり、これに生活費控除五〇パーセント、専門学校を二〇歳で卒業して六七歳まで四七年間の可能というべき就労年数の中間利息を利率年五分として、そのライプニッツ係数一七・九八一で計算すると、三九〇四万九三三八円となる。

(2) 慰謝料

(被告眞一及び穗子の主張)

三五〇〇万円

大助は、明るく素直かつ正義感あふれる性格で、家族思いの心優しい青年であり、前記のとおり専門学校に通いながら、バイクショップの手伝いをこなし、その顧客らからの信頼も絶大であった。本件事故により大助の受けた恐怖と苦痛、わずか一八歳で人生を終えたことによる同人の無念は計り知れない。そして、後記のとおりの本件事故の態様、本件事故後の原告の事後措置、言動等に見られる不誠実な態度を総合すれば、大助の固有の慰謝料として三五〇〇万円が相当である。

(原告の主張)

二〇〇〇万円

大助死亡による慰謝料は、大助自身及びその遺族の分を含めて二〇〇〇万円とするのが相当である。

(二) 物的損害について

(1) 車両損害

(被告眞一及び被告穗子の主張)

三八万円

本件バイク(初年度登録昭和六〇年八月、スズキGSX―R七五〇)は、本件事故により大破し、全損状態である。本件事故当時の同年式の同型車の再調達価額は、中古車の取引市場価格で三八万円である。

(原告の主張)

一三万円(ただし、多くとも債務不存在確認請求の主張に係る二五万円を超えるものではない。)

本件バイクは、本件事故により大破し、全損状態であることは認めるが、その損害は、平成元年発行の「レッドブック」(オートガイド自動車価額月報)では、三七万円であるところ、平成二年以降、同書籍には昭和六〇年登録の自動二輪車の価額記載はない。そこで、同書籍において、同型車の値下がりが一年間で四万円と看取できることから、本件事故時までの経年数分を減額すると一三万円となる。

(2) 衣類等の損害

(被告眞一及び被告穗子の主張)

大助が着用していた皮ジャンパー(購入価額六万四〇〇〇円)、ヘルメット(同三万八〇〇〇円)、ブーツ(同二万八〇〇〇円)、グローブ(一万円)及びジーンズ、シャツ(同九八〇〇円)は、本件事故により各損傷あるいは使用不能となり、その損害は各購入価額が相当であり合計は一四万九八〇〇円である。

(原告の主張)

大助が着用していた皮ジャンパー(購入価額六万四〇〇〇円)、ヘルメット(同三万五〇〇〇円)、ブーツ(同二万八〇〇〇円)、グローブ(一万円)及び衣類が本件事故により各損傷あるいは使用不能となったことを認めるが、その損害は、各購入額の五割が限度であるか、各耐用年数を考慮した左記のとおりの損害額となる。

皮ジャンパー 五万四一六〇円(平成六年一二月ころ購入、耐用年数五年、年間の定率法償却率〇・三六九)

ヘルメット 二万二〇九〇円(平成六年春ころ購入、耐用年数五年、年間の定率法償却率右同)

ブーツ 六〇三〇円(本件事故の二年前ころ購入、耐用年数三年、年間の定率法償却率〇・五三六)

グローブ 二一六〇円(本件事故の二年前ころ購入、耐用年数三年、年間の定率法償却率〇・五三六)

(三) 過失相殺

(原告の主張)

本件事故が発生した道路は、車両の走行速度が最高毎時五〇キロメートルと指定され、原告及び大助双方からの見通しは良好であった。本件事故場所手前の大助が進行してきた道路は、小俣川に掛かる新上野田橋上に存し、同橋部分は、大助進行方向からして、上り坂となり橋の中央部分付近において頂上となり、本件事故場所に差し掛かるまで下り坂となっていた。このような状況において、自動車運転者としては、前記上り坂を走行中、その先の下り坂部分の道路状況を確認できないので、坂の頂上付近手前もしくは下り坂に差し掛かる手前で、自車の速度を適宜減速し、道路前方の安全を確認して進行すべきであった。しかるところ、大助は、時速約七〇ないし八五キロメートルを大幅に超える速度で、右橋に掛かる道路を走行していた。

本件事故は、右のとおりの本件事故場所直前の道路状況に対応しない高速度で進行したために、原告の車両の手前で停止することが不可能な状態、又は、前方の安全確認を十分に行わずに運転したために、原告車両の発見が遅れ、適切な制動措置が間に合わず、これに、大助の制動及びハンドル各操作が不適切であったため、十分に制動する前に転倒し、高速で原告車両に衝突したものである。

これによれば、大助側には、少なくとも二割の過失が存し、同割合が損害額から減じられるのが相当である。

(被告眞一及び被告穗子の主張)

大助が本件事故の発生場所の直前付近を走行していた速度は、時速六〇ないし六五キロメートルの、ほぼ指定速度に副うものであった。これは、本件バイクの構造、被告ら側において実測したバイク滑走時の道路面の摩擦係数、同摩擦係数に関する近時の研究成果、急制動時の制動が本件バイクの後輪のみであることなど、適正な前提事実及び数値を基礎に物体の運動式を計算することにより、算定される。

大助は、その自動二輪車の運転経験が示すとおり、交通運転法規を遵守し、運転技術に優れていたものであり、本件事故場所の直前において、前方、左右の注視を尽くし、安全運転をしていた。その上、本件交差点は、大助進行道路が、原告後退道路に対し、優先道路となり、原告後退道路は、大助進行道路に鋭角に接する側道の状態にあるものであって、このような優先道路を走行する者において、左側の側道上に位置して進入してくる車両の動勢を注視しながら運転する義務はない。そこで、大助が前方の安全確認を十分行わなかったことにより、原告車両の発見が遅れ、適切な制動操作が間に合わなかったとの落ち度はない。

そして、大助が、前方注視を尽くしていても、原告車両の交差点への後退での進入という異常な走行をしていることを認識、判断し得たのは、衝突地点から本件バイクのスリップ痕の印象が始まった位置までの距離約四一・六メートルから制動操作を開始して車輪がロックされるまでの空走距離を加えた地点というべきである。大助の転倒は、そのスリップ痕の形状等から、後輪の制動固定(ロック)によるものというべきであり、前輪の制動ロックによるものとは言い難く、原告の後退進出が、右道路状況からして異常、突然のものであることから、パニックブレーキをかけたことを考慮すれば、同状況において、制動、ハンドル操作の不適切ということはない。

そこで、原告の主張するような大助の時速約七〇ないし八五キロメートルでの高速走行又は前方不注視による原告車両の発見と制動操作の遅れとの事由に、ブレーキ又はハンドル操作の不適切さによる転倒、衝突という落ち度はない。

(四) 弁護士費用 八九九万四四〇五円

(五) 損益相殺

(原告の主張)

本件事故による大助死亡の損害金として、前記のとおりの自賠責保険からの三〇〇二万九一七〇円の支払いがなされた他に、三井海上火災保険株式会社から一〇五万円、大助の入院先病院である足利赤十字病院に文書料として五一五〇円の各支払いがなされた。この合計一〇五万五一五〇円が、右自賠責保険による三〇〇二万九一七〇円と併せ、大助の損害賠償請求分から控除されるべきである。

(被告眞一及び被告穗子の主張)

同被告らが、自賠責保険から右三〇〇二万九一七〇円の支払いを受けたのは、本件事故後の平成八年五月一〇日である。本件事故日から同支払日までの年五分の割合による遅延損害金一五七万五五〇三円は、原告が負担すべきである。そこで、一五七万五五〇三円について同被告らがその相続分により二分の一ずつ取得した七八万七七五一円を加算して請求する。

2  被告眞一及び被告穗子に生じた損害

(一) 慰謝料 同被告らにつき各一二五〇万円

被告眞一及び被告穗子は、大助の両親であり、かけがえのない息子にこれまで愛情を注ぎ、期待をかけてきたところ、原告の無謀な運転により突然最愛の息子を失ったものであり、その失意と悲嘆は筆舌に尽くし難く、今なお深い悲しみの中にある。これによれば、同被告ら各自につき一二五〇万円の慰謝料が相当である。

(二) 弁護士費用 同被告らにつき各一〇〇万円

3  被告圭三郎に生じた損害

(一) 慰謝料 一〇〇〇万円

被告圭三郎は、大助の実弟で、本件事故当時中学二年生であり、兄の大助を慕っていたところ、本件事故により兄を奪われたその悲しみは筆舌に尽くし難く、今なお深い悲しみの中にある。本件事故直後、原告及びその妻の実父は、亡大助の遺体の枕元で、「私は止まっていたのです。そしたらこちらの息子さんが転倒してぶつかってきたのです。」「あんたの息子さんが勝手に転倒してころがって車にぶつかってきたんだ」等と、亡兄を避難する言葉を述べ、被告圭三郎は、実父母に「なぜ車の人はお兄ちゃんのことを悪く言うのだろう」と泣きながら訴え、その精神的な打撃は計り知れないものがある。これによれば、同被告の慰謝料は一〇〇〇万円が相当である。

(二) 弁護士費用 一〇〇万円

第三当裁判所の判断

一  甲第一号証ないし第二二号証、第二四号証ないし第二七号証、第二九号証ないし第三〇号証、乙第一号証ないし第三八号証(甲乙各号証は枝番号を含み、甲乙各号証中、各写真撮影報告書及びビデオテープは、各特定主張に係る日時、場所及びその被写体を撮影録画したものであることにつき争いがなく、その余の各書証は、その成立(写しは原本の存在も含めて)に争いがない。)、原告本人、被告山田眞一本人各尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

1  本件事故発生場所及びその付近の状況等

本件事故発生場所及びその付近の道路、地勢は、概ね別紙図面1のとおりである。

大助進行道路は、群馬県桐生市方面から栃木県足利市葉鹿町方面に東西に通ずる歩車道の区別のあるほぼ直線状の車道部分幅員約九メートル(両側路側帯部分幅員約一・四メートル、その余の車道部分幅員各約三メートル)の片側一車線アスファルト舗装道路であり、本件交差点内を通じて中央に黄色中央線の道路標示がなされ、最高速度が毎時五〇キロメートルと指定され、本件事故場所から大助が進行してきた桐生市方面道路には、小俣川を跨ぐ橋梁道路部分(約二一・六メートル)が存し、同橋梁部分を頂上として東西に下る形状であり、桐生方面から同橋部分を走行する場合、やや斜度のある上り阪を登坂しその頂上を通過するまで、前方の見通しができない状態にあり、下り坂である前方道路はその斜度が水平距離一〇〇メートルにつき約三・五メートル下る勾配(後記の平成七年五月一〇日付け実況見分調書に、「勾配桐生方面へ100/3・5上り」と記載されている。後記の「解析書」(甲第二二号証)中に、「ⅰ」は勾配率として「SINθ」に等しく、「ⅰ」を〇・〇三五とする記載や、「鑑定書」(乙第二五号証)中の、添付資料2の下部に「傾斜θ≒3.5」とある記載の趣旨は明らかでない。)の状況にあり、ほぼ直線状の道路である。同道路の左側歩道部分の外側には、青色の金属製網フェンスが道状に設置され、同フェンスは本件事故場所の交差点の手前直前、歩道が切れる当たりまで続き、原告後退道路の南側端に屈折して続き、別紙図面1のと表示された位置にはコンクリート電柱が設置されていた。

原告後退道路は、アスファルト舗装され、幅員約四・二メートル程であり、北東側は民家の塀、南西側は右フェンスが設置され、その奥は民家に通じる行き止まりか、進入道路よりも幅員の狭い道路が分岐して存していた。原告後退道路と大助進行道路との交差状況は、信号機による交通整理の行われていない交差点であり、等高面ではなく、原告後退道路に向けて下り坂となり、交差部分の手前程斜度が大きい坂道となっており、大助進行道路は原告後退道路に対し優先道路の関係にあった。

2  本件事故前後の大助、原告の動向等

(一) 大助は、本件事故当日、その両親が経営するバイクショップの顧客のバイク関係の在庫部品を受け取るため、それまでに自動二輪車を運転して幾度か赴いたことのある栃木県足利市所在の自動車販売会社に、自己が専用使用していた本件バイクに、ヘルメット等を着用して乗車して向かい、途中経路である小俣川の架橋部分の上り坂道路を走行し、その先の下り坂を本件事故場所の交差点に向かって走行し、バイクに急制動を掛けるとともに、バイクもろとも左側に転倒し、バイク及びその身体とも進行方向前方に滑走させ、後退してきた原告車両の左側面にバイク及びその身体を衝突させた。事故直後、大助の身体は、原告車両の下部に相当程度入り込んでいる状態であった。当時、晴天で、路面は乾燥していた。

本件バイクは、スズキGSX―R七五〇とされる商品名の自動二輪車であり、同商品名の自動二輪車の規格表示は、全長二一二〇ミリメートル、全幅七四五ミリメートル、全高一二一五ミリメートル、シート高七六五ミリメートル、重量一七九キログラム、総排気量七四九シーシー等であり、本件バイクの外装は、同型車の純正品と異なるものの、右規格とほぼ同様の状態であったと認められ、本件バイクの両脇に風防が装着されていたことは、本件全証拠の上からは、うかがうことはできない。

(二) 原告は、本件事故当日、その二歳程の子供を原告車両の後部に乗車させ、本件事故場所付近に葉鹿町方面から差し掛かり、方向転換をするため、本件交差点内から原告後退道路に自車を右折進入させた。原告は、もと来た道を後退のまま、本件交差点内に出て、方向転換をして、それまでの進路反対に進むこととして、本件交差点内に、自車を後退進出させ、左側交差道路を走行してくる大助の本件バイクとの間に本件事故が発生した。

3  本件事故に関する実況見分調書等の記録内容

(一) 本件事故日の午後二時二〇分から午後三時三〇分ころにかけて、原告を立会人として、足利警察署司法警察員らによる実況見分がなされ、立会人は、「一旦停止し、左右を確認したのは、別紙図面2の<1>の地点、バイクを発見し停止したのは同<2>地点、その時相手は<ア>地点、バイクが転倒したのは<イ>地点、衝突したのは<×>地点、押し出されて停止したのは<3>地点、相手が倒れていたのは<ウ>地点、バイクが倒れていたのは<エ>地点」と記録される指示説明をし、実況見分作成者は、諸種の見分結果を踏まえて、「以上を総合し<×>点を衝突地点と認定し・・」と平成七年五月一〇日付け実況見分調書に記載するとともに、別紙図面2のとおりの大助バイクのタイヤのスリップ痕、バイク車体と道路との擦過痕等の状態が、測定記録された。

本件事故同日の午後四時二〇分から午後四時四五分ころにかけて、原告を立会人として、足利警察署司法警察員による実況見分がなされ、前記の実況見分調書の<1>、<2>、<ア>、<×>等の位置が現場に再現され、それらの各位置から、立会人(原告)、他警察官が関与して、それらの各位置からの見通し状況、距離が測定記録された。

(二) 原告は、本件事故当日、足利警察署の司法警察員に対し本件事故の状況について供述し、司法警察員による供述録取書が作成されたところ、「・・道路に入り後退をして、道路上に出る時に左右道路を見ると、左右道路からは車等は走ってこなかったので、・・・後退し、左にハンドルを切りながら運転席が道路上にでたとき、左方道路の桐生市方面から走ってくるオートバイを発見したので、このまま後退して行ってはあぶないと思い、ブレーキをかけて停止してすぐの時・・オートバイのブレーキの音がキーとしたと思った瞬間・・衝突したのです」旨等を供述していた。同様に、平成七年八月二二日、原告の司法警察員による二通の供述録取書が作成され、前記実況見分調書の立会指示内容及び先の供述調書とほぼ同旨の供述をしていた。

本件事故に関し同警察署司法警察員から同警察署警視正宛の平成七年一二月二一日付け捜査報告書が作成された。同報告書には、衝突時の車両状況、衝突部位、衝突後の被疑車両(原告車両)の動きが記載され、衝突後の被疑車両の動きについては、「前記<2>地点に停止した被疑車両の位置から被害車両と衝突しその衝撃により押し出され被疑車両が停止した位置までの距離は、前部右角が二・二メートル、後部左角が四・八メートルであり運転席は<3>であった。その時の被疑車両のずり痕はなかった。」と記載されていた。

原告は、平成七年一二月二二日、宇都宮地方検察庁足利支部において、本件事故について検察官に対し供述し、その供述録取書が作成されたところ、同調書には、「後退しながら左方を見て更に右方を見て<2>で停止しました。更に前進して切り返しをするため停止したのです。そして、<2>で停止すると同時に無造作にオートマチック車のギアをドライブに入れながら、左方道路を見ました・・・・」等と供述していた。

4  大助の経歴、本件事故後における原告、被告らの関係等

(一) 大助は、昭和五一年九月一七日、被告眞一及び被告穗子の長男として出生し、その実弟である被告圭三郎(昭和五六年六月二七日)とともに、両親に養育されて成長し、群馬県桐生市内の小学校、中学校を経て、同県立桐生工業高等学校を卒業し、平成七年四月に同県立太田産業技術専門学校に入学して、被告ら方から通学し、格別の疾病等の問題もなかった。

被告眞一は、昭和六一年七月ころ、他に勤務する傍ら、被告穗子とともにオートバイの用品を販売等する店舗を開店し、平成元年四月、肩書き住所地に同店舗を移転し、バイク用品販売修理店「はんぐおん」として営業を開始した。大助は、右店舗開店時ころから、その手伝いをし、バイクへの強い関心、興味を示し、一六歳時に原動機付き自転車の免許、高校二年生時に中型自動二輪免許、高校三年生時に、群馬県公安委員会指定試験場において、平成六年一二月限定解除をそれぞれ取得した。大助は、右専門学校入学後、就学時間の合間には、右店舗の手伝い、土日曜日には、部品交換等の修理作業に従事するとともに、同店舗が募るバイク友好者らによるツーリングに同伴するなどし、バイクへの愛好、関心がその生活において大きな比重を占める青年であった。

(二) 原告の妻、その実両親は、本件事故後、被告眞一及び被告穗子に対し、同被告らと顔を会わせた際、その事故の原因を巡り発言をしたところ、その発言内容が、本件事故の真相に副わないものであるとともに、大助及び同被告らの名誉及び感情をいたく損なうものであるとして、同被告らから、右言動に対する抗議がなされるとともに、原告の妻、その実両親に対し、謝罪及び謝罪の意思を新聞に掲載するよう求める民事調停事件が係属した。同調停事件において、相手方となった原告の妻、その実両親は、大助の収容先病院での言動につき謝罪し、同被告らに慰謝料として各一〇万円を支払い、同調停事件における係争案件に関し、同調停条項に定めた以外に何らの債権債務がないことを確認するなどの調停が成立した。

二  被告ら主張の各損害及びその額を検討する。

1  大助固有の損害

(一) 人的損害

(1) 逸失利益

大助の前記認定のとおりの生活歴、死亡時年齢等を総合勘案すると、同人の逸失利益は、賃金センサス平成七年、第一巻、第一表産業計、男子労働者学歴計全年齢平均年間収入五五九万九八〇〇円を基礎収入とし、専門学校卒業時である二〇歳から満六七歳まで四七年間就労可能とし、生活費控除の割合を〇・五とし、この間の中間利息の利率を年五分としてライプニッツ係数(一七・九八一)により右逸失利益額の現価を算定するのが相当であり、これによると五〇三四万五〇〇〇円(五五九万九八〇〇円×〇・五×一七・九八一=五〇三四万五〇〇一円、一〇円未満切捨。)となる。

なお、大助は、本件事故がなければ右専門学校を卒業するまで、家業のバイクショップの手伝いをし、その収入を上げるなど同店への貢献をしていることが認められるところ、これは後記のとおり慰謝料の算定につき加算の考慮をすることとし、本項目において加算の考慮はしない。また、被告ら代理人は、ライプニッツ方式による中間利息の控除は、近時の低金利等の状況を考慮し、年四分以下の利率とすることが相当である旨主張し、右のとおりの低金利の状況であることや、その採用利率により四七年の長期に及ぶ計算結果につき大きな影響を及ぼすことは首肯できるところ、遅延損害金の利率を年五分とする法定利率との関係や、長期に及ぶ計算を近時の状況で法定利率以下とする相当な計算根拠も容易に確定しえないことなどから、右主張を考慮することはしない。また、大助は、本件事故時一八歳であり、右のとおり二〇歳から就労開始とすると、損害についての遅延損害金との関連から、就労開始時と本件事故時との期間差についてなおライプニッツ係数の修正をすることが必要とも考えられるところ、原告指摘の同係数や、逸失利益の推計の趣旨及び一件記録上認められる諸般の事情に鑑み、右のとおりの計算法を採用することとした。

(2) 慰謝料

本件事故の態様、大助、被告眞一及び被告穗子との親族関係、バイクショップにおける手伝い等の同被告らとの生活状況並びに前記認定の諸般の事情を総合勘案すると、大助及びその遺族である被告眞一及び被告穗子を含めた者の慰謝料として、合計二二〇〇万円とするのが相当である。

なお、本件事故後、原告親族らにより本件事故の事実に符合しない言動等がなされたことにより、同被告らが精神的苦痛を被ったことが認められるところ、それら言動は、本件事故に由来するものではあるが、原告ではない別人によりなされ、その者との間において前記認定のとおりの内容の調停が成立していることを考慮すると、それらを、本件事故による苦痛として原告が賠償すべき慰謝料の算定につき考慮することはしない。

被告圭三郎は、大助の実弟であるところ、民法七一一条所定の関係に準ずる者とは認めがたい上、同被告について、個別の慰謝料は、前記のとおりの事故後の原告親族らの言動が大きいものであり、前記説示のとおり、原告に対する損害賠償として認容することはできない。

(二) 物的損害

(1) 車両損害

本件バイクが、昭和六〇年に初年度登録がなされ、全損状態で大破したことは当事者間に争いがない。本件事故時における、本件バイク相当の自動二輪車の再調達価額は、中古車価額を掲げる書籍(甲第二六号証、第二七号証)、その経年数等を考慮し、二五万円を超えるものではなく、二五万円と認定するのが相当である。

(2) 衣類等の損害

関係各証拠及び弁論の全趣旨によれば、皮ジャンパーを五万四一六〇円、ヘルメットを二万二〇九〇円、ブーツを六〇三〇円、グローブを二一六〇円と認定するのが相当であり、着用していた衣類は、その内容、購入価額は必ずしも定かでないところ、本件全証拠及び弁論の全趣旨により、三〇〇〇円と認定するのが相当である。

2  被告ら固有の損害

前記のとおり、大助、被告眞一及び被告穗子の本件事故による慰謝料を一体として認定し、被告圭三郎の原告に対する本件事故による慰謝料は認容しない。

3  すると、当事者間において争いのない葬儀費用合計一二〇万円、治療費二万七一七〇円、入院雑費一〇〇〇円、文書料五一五〇円、レッカー代三万円に、前記のとおり認定した逸失利益五〇三四万五〇〇〇円、慰謝料二二〇〇万円、車両損害二五万円、皮ジャンパー五万四一六〇円、ヘルメット二万二〇九〇円、ブーツ六〇三〇円、グローブ二一六〇円及び衣類三〇〇〇円の合計は、七三九四万五七六〇円となる。

三  過失相殺について

1  本件事故による大助の死亡及び車両等の物的損傷は、大助の正立する運転走行が転倒に変じ、その転倒による衝撃、続く道路上の滑走、その衝撃、原告車両への衝突により生じたものである。そして、右各衝撃の端緒となる転倒については、進路前方における原告運転車両の進出ないし進出しそうな状態に反応して大助の講じた制動措置に続いて生じたものであることが認められる。右制動について、バイクの制動装置の構造(二系統二操作)、印象されたスリップ痕の状態、大助のバイク乗車歴、取得運転免許等から推察される運転技量等を総合して考察するに、突然の急制動措置であったと推察される。

そこで、右急制動措置時及びその直前の状況について検討する。同制動措置は、本件交差点及びその付近における異常を認識しての措置であり、本件事故場所手前の大助進行道路上において、本件交差点付近が認識できる場所は、せいぜい別紙図面1に記載の点付近の位置からというべきである。実況見分調書、原告の供述等には、原告の後退位置<1>から左方約八五メートルの地点(別紙図面1のの位置)から、本件交差点付近の認識ができる旨の記載等が存するところ、それらは、実況見分時に、視認者が、原告後退道路において、静止し意識して静止する人物を目視する状況からの距離であり、大助進行道路を進行してくる運転者の立場においては、上り坂を自動二輪車で走行登坂してくる際、その視線は、通常当該車体上の眼球の位置の高さで道路面に平行な方向に向けられ、その上り坂の部分を登り終えて下り坂に掛かり初めて進路前方の視認が可能となり、の位置付近からの前方視認による本件交差点の存在及びその左方の状況の認識、把握は著しく困難であったというべきである。

そして、本件事故場所のスリップ痕が急制動措置により印象されたものとすると、制動措置の講じられたのは、空走距離分(その時間一秒として)手前となり、時速六〇キロメートとして、スリップ痕の印象開始場所(衝突場所とされる位置から約四一・六メートルの位置)から約一六・六七メートル手前、時速八〇キロメートとして、スリップ痕の印象開始場所から約二二メートル手前となり、前方の異常を認識したのは、その範囲の道路を走行中であり、速度が速いほど、前方における異常の認識は上り坂を終えてより短い瞬間に生じるものとなる。

右制動直前の速度について、原告提出の「解析書」(甲第二二号証)では、本件バイクの原告車両への衝突時速度を、原告車両の損壊の程度から控えめに見積もって時速三〇ないし四〇キロメートルとし、それに本件バイクの横転滑走時の擦過痕の長さと〇・四五ないし〇・七とする滑走時の道路との摩擦係数とから横転時速度を算出し、スリップ痕の印象された間の右摩擦係数を〇・七とし、運動体が制動効果が生じてから制止するまでの物理運動式を用いて、他の考慮すべき事項、数値を除いて控えめに見ても時速七〇ないし八〇キロメートルであると算出されている。

この式は、自動車事故工学に多く用いられているものであるところ、本件バイクの滑走時の摩擦係数については、その引用に係る摩擦係数が、昭和五四年の文献か、同係数を計測した牽引実験が、昭和五九年ころのものとされ、それらの前提事実が不明であるか、被験対象とされた各自動二輪車のステップは固定式で、ステップの折り畳める本件バイクと異なる物であることや、平成五年刊行の関連文献(乙第二五号証)において、平成三年の実験によると、乾燥した舗装路面で〇・三五ないし〇・五と指摘されていることなどを考慮すると、前記摩擦係数をそのまま引用することについては疑問が残る。さらに、衝突時の本件バイクの滑走速度について、原告車両の破損状況から、前記のとおりの速度を推測する明確な証拠はない上、原告車両の衝突後の移動について、実況見分調書記載のとおりの位置から衝突の衝撃自体により横ずれ移動したのかも、その衝突態様等が定かでなく、意見書(甲第二四号証)、鑑定書(乙第二五号証)の衝突シュミレーションを検討、吟味する前提条件を確定できない。そして、スリップ痕発生時の摩擦係数については、同係数〇・七は、自動二輪車の前後輪に急制動を掛けた際の数値であるとの資料(乙第二五号証)もあり、本件のスリップ痕は、その形態からすると、後輪のみによるものであることも否定し難いことから、右〇・七を引用することにも疑問が残る。

そこで、鑑定書(乙第二五号証)の考察や本件全証拠を総合すると、前記の制動直前の速度は、約六〇ないし六五キロメートルと推定されるに止まるものである。

右速度によれば、大助は、早くともスリップ痕手前約一八・〇五メートル、本件事故場所から約五九・六五メートル手前(時速六〇キロメートルならば約五八・二七メートル手前)で、前方の異常を認識していたことになり、上り坂を上り終えて、下り坂に掛かる別紙図面1記載の<ア>地点付近において、本件交差点及びその付近の状態の認識が可能であったというべきである。

そこで、前記のとおりの状況において、右のとおりの速度で、急制動をかけることにつきさらに検討する。本件交差点においては、大助進行道路が優先道路ではあり、大助進行道路から原告後退道路の状況の見通しも良くないところ、大助進行道路上の車両運転者において、原告後退道路における車両の動勢を考慮することなく走行することができ、また、同道路上の車両は大助進行道路上の車両の進行を妨害しないよう走行するという完全な信頼の原則が適用される場所とは言い難く、ときには通行車両の進入がある危険の大きな場所であるから、同所及びその付近の状況の認識が可能となる前記の下り坂上部付近において、その状況如何により、本件交差点の手前で安全に停止できる方法で運転すべきである。そして、本件バイクのような規模の自動二輪車は、急制動による転倒の危険が構造的に大きく、その措置も咄嗟、より適正なものが要求されるものであるから、本件事故場所手前の道路が、最高速度毎時五〇キロメートルと指定され、下り坂という道路状況からすれば、より減速し急制動によっても転倒しない速度で走行すべきであり、大助の前記のとおり推定される走行速度はこれに適合せず、この運転も、本件事故の発生の要因になったものというべきである。

そうすると、前記のとおり認定した本件事故に至る一切の事情を総合すると、過失相殺として、大助側の損害の一割を減ずるのが相当である。

右過失相殺により、請求できる金額は六六五五万一一八四円となる(七三九四万五七六〇円×(一-〇・一)=六六五五万一一八四円)。

四  損害補填

1(一)  自動車損害賠償責任保険から、平成八年五月一〇日、本件事故による大助の人身損害賠償分として三〇〇二万九一七〇円の支払いがなされたことは、当事者間に争いがない。

(二)  大助を治療した足利赤十字病院において本件事故に関し作成した文書の文書料五一五〇円及び本件事故による損害の補填として一〇五万円が、原告側から各支払いがなされたことが認められる(甲第二九号証及び弁論の全趣旨)。

2  前記三のとおり、本件事故により大助側が請求できる金額は六六五五万一一八四円であるから、これから右既払いの合計額三一〇八万四三二〇円を、損害の補填分として控除すると、残額は三五四六万六八六四円となる。

五  弁護士費用

前記のとおりの認容額、本件事案の内容等、諸般の事情を勘案すると、弁護士費用は、本訴請求に要した全額分として三五〇万円と認定するのが相当である。

右四の額に弁護士費用相当分三五〇万円を加算すると、三八九六万六八六四円となる。

六  自賠責保険からの支払い分についての遅延損害金の請求

平成八年五月一〇日自賠責保険から三〇〇二万九一七〇円の支払いがなされたことは争いがないところ、原告代理人は、右支払いがなされるまでの遅延損害金分として、右支払額について年五分の割合による三八三日分の一五七万五五〇三円を請求している。

この点、前記のとおりの各損害費目の具体的な支払い負担日を考慮することなく、一括して不法行為日に支払われるべきものとして、同日から平成八年五月九日までの経過日数分内の請求は許され、原告において負担すべきものというべきであるから、右一五七万五五〇三円はこれを認容するのが相当である。なお、他の既払い補填分については、その旨の主張はなく、右内容を考慮することはしない。

七  右によると、右六の金額を含めた大助遺族側の相続額及び固有の慰謝料額を含めた合計額は、四〇五四万二三六七円となる。これを、被告眞一及び被告穗子が、相続持分二分の一又は同等の割合で有するものであるから、同被告らは、右額の二分の一である各二〇二七万一一八三円(円未満切捨)及び右六を除く額の二分の一である各一九四八万三四三二円及びこれに対する請求に係る不法行為日の後である平成七年四月二三日から各支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を請求できるものというべきである。

八  以上の次第により、原告の本訴請求は、被告眞一及び被告穗子に対し、右七のとおりの各損害賠償債務元本の不存在の確認を求める限度で理由があるので、認容し、その余は理由がないので、いずれも棄却し、被告圭三郎に対する不存在の確認請求は理由があるので、認容し、被告眞一及び被告穗子の各反訴請求は、右七の損害賠償の支払いを求める限度で理由があるので、認容し、その余は理由がないので棄却し、被告圭三郎の反訴請求は理由がないので棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法六一条、六四条を、仮執行の宣言につき同法二五九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小原春夫)

債務目録

原告が被告ら各自から、次のとおり請求を受けている左記交通事故による損害賠償債務

一 被告山田眞一に対し、四九二八万六八〇四円

二 被告山田穗子に対し、四九二八万六八〇四円

三 被告山田圭三郎に対し、一〇〇〇万円

発生日時 平成七年四月二二日午後二時ころ

発生場所 栃木県足利市小俣町一八九二番地先道路上

当事者 加害者 原告

(運転車両 普通乗用自動車 水戸三三と一〇三一)

被害者 山田大助

(運転車両 自動二輪車 群馬を一四八四)

図面1

図面2

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